波乱万丈の人生だから出来る雑学系フリーライター。悩み?ないですね~。

V(-¥-)Vごとう さとき
雑学系フリーライター

「どうして東京に来たかって?警察に捕まったからですよ」そう言うと男はニヤリと笑った。
メガネの奥の瞳がキラリと怪しく光る。この男、悪魔なのか天使なのか?
社会の闇という地獄を見た男は、社会への復讐を開始した。

腕にある、この光るものはなんなんだ。

ごとうさときさんが博多に住んでいた時の話だ。
その頃、ごとうさんは荷物を転送する仕事を、個人で引き受けてやっていた。
いわゆる「転送屋」というやつだ。
「この荷物をどこそこに送ってほしい」そう依頼されると「はいはい」と言って転送する。
人が聞けば、『そんなこと何も、他人に頼まなくても、自分で送ればすむことなのではないの?』と思うだろう。
しかし、知られたくない何らかの事情があって、送りたい荷物を自分で送ることのできない人だっている。
依頼主は自分の素性を明かせないとか、さまざまな事情を抱えている人ばかりなのだ。
とはいえ、依頼主の事情をごとうさんは知らない。
送り先が不倫相手でも、隠し子でも、こどうさんには何も関係ない。詮索もしない。関心もない。
「はいはい」と言って指示をこなすだけ。それが「転送屋」という仕事なのだから。

その日もいつものように依頼された荷物を送りだす作業をしていた。
そこへ数人の男が突然、踏み込んできた。
「警察だ!」
わけがわからないまま、ごとうさんの腕には手錠がかけられていた。

SOHO向けサイトを見たことが運命を変えた。

「生まれは岐阜です。でも全国を転々としていましたね」
と、ごとうさんは言う。
一番、長く住んでいたのは博多。博多では最初、中古のOA機器の販売をしていた。今から6~7年前のこと。
しかし、販売の仕事だけでは食っていけない。他にも何か出来る仕事はないか?
と考えた。
Webを見ているうちに、SOHO向けのサイトを見つける。
SOHOとはSmall Office/Home Office(スモールオフィス/ホームオフィス)の略。「パソコンなどの情報通信機器を利用して、小さなオフィスや自宅などでビジネスを行っている事業者」といった意味だ。
その頃、ネットを使ったスモールビジネスが注目されていたのである。
見つけたSOHO向けのサイトに「ライター募集」というのがあった。
『文章を書くことは好きだし、この仕事なら出来るかも』
ごとうさんはそう思って応募した。
1万文字書いた。しかし、ギャラは1文字0.5円。1万文字書いても5000円。
「バカバカしいほど安いけど、自宅で出来るのが良かった。沢山、書きましたよ。おかけで書く訓練にはなりましたね」
いろんな仕事をしながらもライターの仕事は続けていた。

だからトカゲのしっぽだって言ったのに。

ごとうさんは警察に連行された。拘留されたのは東京の警察署。
容疑はカード詐欺。
警察はこどうさんが主犯ではないものの、ごとうさんから黒幕にたどり着けるのではないか?と考えたのだ。
「そのカード詐欺をやっていた依頼主の荷物の転送の仕事を、僕は3年やっていました。普通、詐欺をやるやつは同じ業者に長い間、仕事を頼まないんですよ。でも、僕は3年もやっていた。だから警察は僕が組織の末端の人間だと思ったんです。僕をたどって芋ずるで組織を逮捕しようともくろんだんですよ」
しかし、ごとうさんは本当に犯人のことは何も知らない。叩いても何も出ない。
証拠もなしで容疑者を拘束できるのは23日だけ。
23日後、ごとうさんは釈放される。しかし、警察を出たとたん刑事が待っていて手招きした。
「話でもしようか?」
そう言われてついて行ったらまた23日間、拘留された。
「自由になった、と思ったところにまた捕まった。これはショックでしたね。組織にすれば転送屋の僕なんかトカゲのしっぽ。一か月半、僕を調べた警察は『こいつは本当にトカゲのしっぽだ』とわかってくれて釈放してくれました」
ようやく容疑は晴れて自由の身に。
しかし、博多に帰るお金がない。ポケットには4000円しかなかった。
「警察は東京に連れてきておいて『帰りは勝手に帰れ』ですからね」
職はなくなっていた。住んでいたアパートにも戻れなくなっていた。すべてを失って、ごとうさんは東京にひとり取り残された。

転んでもタダでは起きたくないのだ。

すべてを失ったごとうさんだったが、ひとつだけ残されていたものがあった。
それがライターの仕事だった。
ライターの仕事を武器にしよう。そうごとうさんは思う。
「東京にいることだし、逮捕されたことを本に書こうと思ったんです」
転んでもタダでは起きたくない。
企画書を書いて出版社に持ち込みを続けた。そして企画が採用される。
『逮捕されたらこうなります!』 (2013/自由国民社)を刊行。
「本はあまり売れなかったけれど、本を出したおかげで単価の良いライターの仕事が取れるようにはなりましたね」
『逮捕されたらこうなります!』 (2013/自由国民社)がライターとしての実績になった。
続けて『痴漢に間違われたらこうなります!』 (2014/自由国民社)を刊行する。
『痴漢に間違われたらこうなります!』『逮捕されたらこうなります!』以上に売れませんでしたね(笑)」
しかし、ごとうさんが東京に来たのが2012年のこと。2008年にはランサーズがスタートしていてWebライターという仕事にニーズが高まっていた。
「その頃のWebライターの仕事は『このキーワードをとにかく入れてくれ』というもので、文章の良い悪いは無視。ひどい仕事ばかりでしたよ」
アフィリエイターが稼ぎに稼いでいた時代だ。
それでも生きていくためになんでも書いた。
「難しいことを解りやすく書くことに徹しましたね」
昨日まで知らなかったことを、10年も前から知っていたような顔をして書く。「B級グルメから核兵器まで。ヘンな事知ってます」をキャッチフレーズにした雑学ライターとして活躍するようになる。

ごとうさんには悩んでいるヒマはないのだ。

「悩みですか? 特にないですね」
そう言ってごとうさんは笑う。
雑学ライターとして活躍しているからといって生活が豊かなわけではない。悩んでいるヒマなんてごとうさんにはない。
最近、神保町で古書の通販を始めた。知り合いの古書店に協力してもらって、古書店の在庫の古書をヤフオクに出品している。
売れた金額から原価を古書店に支払い、残った手数料がこどうさんの利益となる。これからはアマゾンや日本の古本屋にも販路を拡大していく予定だ。
「古書の販売はぜんぜん、利益になってませんね。稼ぎのほとんどはライターの仕事ですね」
最近はライターの仕事の依頼も多くなってきた。出版の仕事とWebサイトの仕事がある。
「出版の仕事の方がギャラは良いけど単発。Webの仕事は安いけどレギュラー。一長一短。どちらにする、というより両方で行く感じですね」
ライターの仕事は月に1万円の時もあれば20万円のときもある。波がありすぎるという。
それって、悩みなんじゃない?と思うのだが、いやいや、ごとうさんには悩んでいるヒマはないのだ。

twitter:@SatokiV
hp:http://echatxfiles.blog45.fc2.com/