SFプロタイピングが日本に紹介されたのは2013年。
インテルのフューチャリスト(未来研究員)である、ブライアン・デイビッド・ジョンソンの著書『インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング』(細谷功:監修/島本範之:翻訳/亜紀書房)によってだった。
刊行当時はそれほど話題にはなっていないと思うが、2020年頃から突然、火が付きだし、2021年になってさらに加速している。
今、「不透明な時代」と言われている。テクノロジーや、人々の考え方が日々、変化しており、時代が読めないと嘆く企業は多い。
そんな、未来が読めない現代において、未来を読むためのキーとなるのが、SFではないかと考えている。
未来を想像し、どのような未来が来るのかを考え、それを起点として製品やサービスを開発する。
「そんなバカげた方法」と鼻で笑う人は、時代に取り残されていると言っていい。
確かに、SFと聞くと、SF小説や漫画、アニメで描かれるたわいものないモノと、多くの人は思うことは理解できる。
『インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング』には、「SFプロトタイプとは、現実の科学技術にもとづいて創作された短編小説や映画、コミックのことである」とあり、「デザイナーや技術者、科学者、アーティスト、学生、あるいは戦術プランナーと、さまざまな立場の人々にとって、SFプロトタイプは未来を想像し、描写するためのまったく新たな方法を提供するものなのだ」とする。
考えてみると、SFから発想し、夢が現実になっているケースは数多くある。
デザイナーやアーティストは、SFをベースにした映画やアニメ、ゲームを枚挙にいとまがないほど生み出してきた。
SFは技術者や科学者にとっても無縁ではない。
携帯電話なんか、昔はSFにしか登場しない、あり得ないモノと考えられてきた。それが今では生活に欠かせないモノになっている。
ロボットもしかり。確かにSFで描かれたロボットはまだ登場していないとしても、身近なところにロボットは数多くある。
日本には世界に誇るSFやアニメなどのエンターテインメントがある。なのに、そのエンターテインメントを製品やサービスの開発に活用する、ということを考えないのは、むしろ不思議なことだ。
今後、SFプロトタイピングを活用する日本企業が現れることを期待している。